Laboro.AI

Laboro.AIコラム

守れ、農業。AIが描く第一次産業の進化像

2021.4.27

概 要

日本の第一の産業、その一つが農業です。農業を始めとするレガシー産業は、AIとの相性が良いと言われていますが、農業には従事者の高齢化や新規就農者の不足などの慢性的な課題があることも事実です。

様々な分野での活用が進み、新たな市場価値を生み出すテクノロジーとして期待されるAIは、これらの課題を解決できるのでしょうか。今回のコラムでは農業における課題を見た上で、今まさに進化するAIの農業分野への活用事例を見ていきます。

目 次

農業が抱える課題
 ・農業従事者の平均年齢
 ・新規就農者の不足と低定着率
AI・IoTが見せる、農業テクノロジーの進化7事例
 ・ドローンを用いた圃場の監視や新人育成
 ・AIライブラリを用いたキュウリの自動選果
 ・AIを活用した水やり技術の習得
 ・トマトの画像物体検出【Laboro.AI事例】
 ・AI搭載 自動収穫ロボット
 ・AI病虫害画像診断システム
 ・稲作でのAI活用
人とAIの挑戦は、まだまだ続く

農業が抱える課題

日本の農業では、現在、主に以下のような課題があると言われています。根本的な解決には難しもある状況ではありますが、AIを活用することにより少しでも改善に近づけるような努力が進められています。

農業従事者の平均年齢

自営で農業に従事している方の数を表す「農業就業人口」。このうちとくに農業に従事する割合が多い農業者を「基幹的農業従事者」と呼びます。まさに日本の農業を支える基幹的農業従事者ですが、その数は2015年の約175万人から2020年には約136万人という非常に早いペースで減少していることが報告されています。また、高齢化も言われており、基幹的農業従事者のうち、65歳以上が占める割合は2015年の64.9%から2020年には69.8%に増加しています。

従事者の数が減少しているだけでなく、さらに平均年齢も上がるということは、より若い従事者の減少ペースが深刻であることが見えてきます。

出典:農林水産省『2020年農林業センサス結果の概要(概数値)』

新規就農者の不足と低定着率

農業の若さに直結する新規就農者の数は、2007年には約73,460人がいた一方、2018年は約55,810人に減少したことが報告されています。もちろん年によって増減はありますが、傾向としては減少の方向を向いている状況です。

一方で、法人運営による農業経営体の数は増加傾向にあります。しかし、個人・法人問わず、やはり農業従事者の数は足りておらず、新たな担い手の確保が業界全体の課題となっていることは間違いありません。

さらに課題となっているのが、新規就農者の定着率の低さです。ある報告では、新規就農者の10%前後が5年以内に離農しているとも言われています。若い農業従事者を確保することだけでなく、それらの方々が安心して農業を営み、充実した生活を送っていけるよう、国や地方自治体、農協を始めとした様々な団体が各種のサポート体制や経済的施策の整備を進めています。

出典:農林水産省『新規就農者調査』確報 – PDF – 平成30年やまがたアグリネット『農業の担い手の現状と課題』

AI・IoTが見せる、農業テクノロジーの進化7事例

残念ながら、産業全体の人口が減るといったこうした大きな課題には、どれだけ新しく優れたテクノロジーであっても、それを導入するだけで根本的な解決につながることはありません。しかしながら、AIやIoT技術を保有する様々なプレイヤーが国の一次産業である農業を支援するために一役買おうと、多くのソリューションの開発を進めています。

ドローンを用いた圃場の監視や新人育成

ベンチャー企業と米農家とが組んで進められたスマート米栽培の取組みでは、人間の目の代わりとしてドローンを活用する試みが進められています。ドローンが圃場上空を飛び、農作物の状態を監視することで、これまで人の経験や勘に頼らざるを得なかった作業を機械に代替させるプロジェクトです。

とくにこの取り組みで今後の成果が期待されているのが、農薬散布の場所やタイミングに関わる領域です。米の栽培には害虫駆除のための農薬散布が欠かせませんが、田んぼが広くなればなるほど、人の目で害虫の発生を監視することが難しくなります。一斉に農薬散布を行えば作業的には簡単ではあるものの、環境保全や衛生面の観点から懸念があります。そこでドローンを活用し、圃場を俯瞰的に監視、害虫が発生した際に素早く発見して農薬を散布するべき場所を特定することが可能になります。人の目による監視の手間が大きく省けるだけでなく、農薬の散布量も最小限で済み、害虫の被害も抑える効果が期待されています。

ドローンの活用は、新規就農者の育成にもその効果が期待されています。ベテランの農業従事者であれば豊富な経験により効率良く農作業を進めることができますが、それを新規就農者にノウハウとして伝えるには難しい面があります。一方、客観的なデータに基づいて動作するドローンであれば、新規就農者にも理由が分かりやすく、視覚的・客観的にそのノウハウを伝授することが可能になってきます。

出典:SMART AGRI『「スマート米栽培」を初めて実施した農家に聞くAI×ドローンのメリット』

※画像はイメージであり、実際の写真ではありません。

AIライブラリを用いたキュウリの自動選果

農業のあらゆる作業の中でも、多くの時間を要しベテランの知見が必要となるのが収穫や選果です。その難易度は農作物にもよりますが、収穫・選果は、高齢の農業従事者にとっては負担が大きく、また新規就農者にとっては難しく、技術伝承や人材確保を妨げる要因の1つだとも考えられます。

選果の難しい農作物の一つがキュウリです。キュウリは品質や傷の具合などで9つの等級に選別する必要があり、この作業をAIで行おうという試みが進められています。この農家では、ご自身が元システムエンジニアであるスキルを活かし、Googleが公開しているAIライブラリ「Tensor Flow」を用いて選別機を開発しています。等級ごとのキュウリの画像を計1万枚、ディープラーニングで学習させ、機械によるキュウリの選別をベテランの域にまで引き上げることが目指されています。

出典:SMART AGRI『農家がグーグルのAIエンジン「Tensor Flow」でキュウリの自動選果を実現』

※画像はイメージであり、実際の写真ではありません。

AIを活用した水やり技術の習得

トマトは、水やりが難しい農作物の1つです。水を少なくして過酷な環境に置くことで甘く美味しくなる一方、少なすぎると枯れてしまうため、給液(水やり)の量とタイミングはまさにベテランの技と言えます。

AIとIoTを組み合わせたシステムで給液のタイミングを学習しようというこの取組みでは、トマト農家のベテラン農業者が葉のしおれ具合を見て給液のタイミングを判断しているところに目をつけ、葉の状態を撮影し、ディープラーニング技術を活用してしおれ具合を特定するための技術を開発しています。

出典:科学技術振興機構『多様な環境に自律順応できる水分ストレス高精度予測基盤技術の確立』

トマトの画像物体検出【Laboro.AI事例】

Laboro.AIも微力ながら、AIを用いた農業分野での取り組みを支援させていただくべく、トマトの画像検出用データセット「Laboro Tomato」を作成・公開しています。

Laboro Tomatoは、トマトそのものの検出に加え、成熟度判定に利用できる画像データセットです。インスタンスセグメンテーションと呼ばれる高度なAI物体検出技術での利用を想定しており、成熟度を元にした収穫予測、自動収穫、劣化したトマトの間引き、特定の成熟期のトマト群への農薬散布、成熟具合に応じた温度調整、収穫したトマトの品質管理などのシステムへの利用を見込んでいます。

参考:トマト画像物体検出データセット『Laboro Tomato』を公開

AI搭載 自動収穫ロボット

移動・探索・収穫という一連の収穫作業を自動で行うことができるロボット「ihano」は、画像認識技術を用いて作物の選定を自動で行い、医療用ロボットアームをカスタマイズした手を用いて収穫作業を行います。1回2時間の充電で最大10時間連続駆動ができ、アプリによる遠隔操作も可能なため、収穫作業の負担を大きく減少させることが期待されています。

出典:ロボスタ『自動野菜収穫ロボットが日本の農業の課題を解決!inahoが3種の実証事業・補助金プロジェクトに採択』

AI病虫害画像診断システム

農作物の病気や害虫の予防は、農作業の中でも重要な対策ポイントですが、高齢化による熟練者の減少や高度な専門性を必要とする側面があり、知識や技術の継承が難しいとされていました。

農研機構・法政大学・ノーザンシステムサービスが共同して開発した「AI病虫害画像判別WAGRI-API」は、農業関係のデータが蓄積されたプラットフォーム「WAGRI」を基盤としており、ユーザーが送った現場の病害画像を、大量の病害画像を学習させた画像AIが自動診断するというシステムです。

経験の浅い新規就農者の育成はもちろん、これまで病害が発生していなかった地域でありながら、温暖化などの環境変化によって初めて病害虫が発生した際の対策を迅速にできるようにすることが期待されています。

出典:SMART AGRI『高精度のAI病虫害画像診断システムが「WAGRI」で提供開始』

※画像はイメージであり、実際の写真ではありません。

稲作でのAI活用

稲作でもAIの活用が進んでおり、効率化や品質向上、人員不足対策に貢献しています。田植え作業の機械化はすでに実現していますが、従来の耕作機は人が押して歩いたり、機械に乗って操作する必要がありました。「無人田植え機GO安曇野」は、衛星利用測位システム(GPS)を使用しており、水田の位置や広さを登録するとAIが苗の間隔や量などを自動計算し、田植えを行います。

そのほか、スマートフォンなどのカメラで撮影した田んぼの画像をAIが自動で判断し、肥料を与える適切な時期を提案「水稲AI生育診断ソリューション」なども登場しています。

出典:中日新聞『AIが自動計算、無人田植え機GO 安曇野、若手農家ら実演』株式会社NTTデータCSS『ソリューション&プロダクト 水稲AI画像解析ソリューション』

人とAIの挑戦は、まだまだ続く

前述のような産業全体の課題を、わずか一つのテクノロジーが解決するようなことは現実的ではありません。AIが効果をもたらす領域は部分的であり、その市場もまだまだ小さく、現段階で広く農業者に使ってもらえるようなパッケージ商品も出回っていないのが現状です。

ですが、部分的ではあるものの、AIを搭載した様々なソリューションやサービスが確かに開発され、少しずつ人を補うようなケースが生まれてきています。農業従事者の目線に立ち、いかにAIというテクノロジーを用い、農業という産業を守っていくか、人とAIの挑戦はこれからも続いていきます。

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