Laboro.AI

エンジニアコラム

広い技術領域をカバーする当社の機械学習エンジニアが、アカデミア発のAI&機械学習技術を紹介&解説いたします。

トマト画像物体検出データセット『Laboro Tomato』を公開

2020.7.15
CTO 藤原 弘将
機械学習エンジニア ロマン・トリグベンコ

概 要

Laboro.AIはこの度、トマトの画像物体検出データセット『Laboro Tomato』を公開いたしました。以下では、開発・公開に至った背景や内容、期待される用途などについてご紹介いたします。

目 次

農業の現状とAI活用
Laboro Tomatoについて
 ・アノテーションの基準について
 ・データセットの構成
Laboro Tomatoの可能性
Laboro Tomatoのダウンロードについて
 ・ライセンス
 ・ご利用にあたっての注意事項
 ・ダウンロード・詳細
公開・更新情報

農業の現状とAI活用

農林水産省の統計によれば、2017年の国内の農業総産出額は9兆円、1984年のピーク時から減少傾向にあるとはいえ、やはり農業が日本の一大産業であることには間違いありません。ですが、農業を支える従事者は年々2〜3%ずつ減少する傾向にあり、その優れたスキルやノウハウ、匠の技とも言える技術をいかに次世代の担い手へと伝承していくかが重要な課題になっています。

その一方、49歳以下の若手の新規就農者の数は4年連続で2万人を超えるペースで増加しており、若い世代ならではの新しいアイデアや最新技術を導入し農業をアップデートしようという動きが出てきていることも事実です。また、政府も「スマート農業」に向けた各種の取り組みを進め、こうした動きを後押ししています。

その最新技術の中心的な役割を担っているのが、AI(機械学習技術)やそれを用いたIoTで、様々な形での活用が始まっています。
例えば、

・ドローンによる農薬散布
・画像からの葉色の解析
・農作物の自動収穫
・病害予測
・収穫予測

などの技術活用が、メディアでも多く取り上げられるようになってきました。

Laboro Tomatoについて

私たちLaboro.AIも、こうした新しい技術を用いた革新的な動きを少しでも支援させていただくため、その第一歩として農業トマトの画像検出用データセット『Laboro Tomato』を作成し、公開させていただくことといたしました。

この画像データセットは、物体検出技術のなかでも精緻な検出を実現するインスタンスセグメンテーション(instance segmentation:画像をピクセル単位で分割し、対象の個体ごとの領域を抽出する技術)での利用を想定して開発しており、サイズに応じた2カテゴリーごとに、成熟度に応じたアノテーションを行なっています。このデータセットによって成熟度予測や収穫予測をはじめとした画像AI領域で活用いただけることを見込んでいます。

なお、GitHub上ではLaboro Tomatoを用いたpre-trainedモデルも公開しています。

アノテーション画像のサンプル

アノテーションの基準について

それぞれのトマト画像は、サイズに応じた2カテゴリー(通常サイズのトマト・ミニトマト)に分類し、それぞれ以下3種の成熟度に応じたアノテーションを行なっています。

・成熟(fully ripened)
 :全体的に赤みがあり収穫が可能なもの(暖色の割合が90%以上)

・半熟(half ripened)
 :一部に緑色の部分があり、成熟までにまだ時間を要するもの(暖色割合が30〜89%)

・緑熟(green)
 :部分的に赤みがある場合もあるが、全体的に緑もしくは白いもの(暖色の割合が0〜29%)

※上記の%基準は、アノテーション作業者により判断されています。

成熟度別の画像サンプル

データセットの構成

データセットは、計804枚の画像データから成っています。具体的には以下のとおりです。

画像枚数:804枚
クラス数:6(トマトのサイズに応じた2クラス × 成熟度に応じた3クラス)
クラス名:① b_fully_ripened (通常サイズのトマト・成熟)
     ② b_half_ripened  (通常サイズのトマト・半熟)
     ③ b_green      (通常サイズのトマト・緑熟)
     ④ l_fully_ripened (ミニトマト・成熟)
     ⑤ l_half_ripened  (ミニトマト・半熟)
     ⑥ l_green     (ミニトマト・緑熟)
解像度:3,024×4,032px、3,120×4,160px

サイズ・成熟度別の画像サンプル

Laboro Tomatoの可能性

今般公開させていただいた画像データセットLaboro Tomatoは、様々なテクノロジーと融合することにより、生産現場で次のようなシーンを実現する可能性を持っています。

・成熟度を元にした収穫予測
・成熟トマトのみの自動収穫
・劣化・陳腐化したトマトの特定や自動間引き
・特定の成熟期のトマトのみへの農薬散布
・成熟状態に応じた温室内の温度管理
・食品メーカーの生産ライン上での品質管理
など

Laboro.AIでは、それぞれの生産現場や製造現場の課題に合わせた活用方法を一緒に考えさせていただくため、オーダーメイドによるAI開発「カスタムAI」を提供しております。AIビジネス活用をご検討の方は、ぜひご相談ください。

Laboro Tomatoのダウンロードについて

ライセンス

Laboro Tomatoおよびpre-trainedモデルは、国際的な著作権ライセンスであるクリエイティブコモンズのCC BY-NC 4.0(Attribution-NonCommercial 4.0 International)の下、非商用目的に限り無料で公開しています。商用目的での利用にご関心をお持ちの方は、お問い合わせフォームよりご連絡ください。

ご利用にあたってに注意事項

当画像データセットおよびpre-trainedモデルは、機械学習技術を用いている性質上、誤った結果を出力する場合があります。ご利用に伴って生じた損失や損害等、いかなる場合においても弊社では一切責任を負いませんので十分ご理解・ご注意の上、自己責任の下でご利用をお願いいたします。

詳細・ダウンロード

ダウンロードおよび詳細については、こちら(GitHub)よりご確認ください。

公開・更新情報

・2020年7月14日 Laboro Tomatoを公開しました。


謝辞

ベースラインモデルの学習にあたっては、株式会社NTTPCコミュニケーションズ様のInnovation Labの計算資源を使用させて頂きました。

撮影ご協力

井出トマトファーム様(神奈川県 藤沢市)

参考・引用

農林水産省 平成30年度 食料・農業・農村白書
Ledge.ai 【農業AI注目企業9選】人工知能で農家の働き方改革は実現するか?