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Laboro.AIコラム

パーソナライゼーション【ビジネス成長のためのAI用語】

2024.1.4
株式会社Laboro.AI リードマーケター 熊谷勇一

用語解説

パーソナライゼーションとは、「パーソン」の派生語で、「個人的なものにすること」「個人に応じて変更したり作り変えたりすること」です。マーケティングの分野では、インターネットなどを通じて各ユーザーの情報を取得・解析し、その人に合った広告を配信したり、商品やサービス、コンテンツをレコメンドしたりすることを指します。

似たような概念にカスタマイゼーションがあります。パーソナライゼーションでは、商品・サービスを提供する側が顧客の興味・関心を引くことを目指して、レコメンドの内容を最適化し、購買につなげることが目的とされます。それに対してカスタマイゼーションは、ユーザー自身が最適化を実施し、商品・サービスを使いやすくすることが目的です。動画投稿サイトで言えば、サイト側から動画をレコメンドするのはパーソナライゼーションで、ユーザー一人ひとりによる再生リストの作成や再生速度の調整はカスタマイゼーションです。

パーソナライゼーションの例には他に、ネット検索もあります。例えばGoogleは、ユーザーが検索したキーワードを基に、求めているものや意図、目的を予測して、検索結果に反映する「パーソナライズド検索」を2005年から導入しています。ユーザーの所在地、過去に検索したキーワード、過去に訪問したウェブサイトなどを参考にして検索結果に反映させていると言われています。

応用&詳細解説

パーソナライゼーションにはAIが多く活用されています。動画投稿サイトやECでのレコメンデーションの中心技術は、協調フィルタリングです。協調フィルタリングは、ユーザーベース(対象ユーザーの行動分析結果を基に他のユーザーに対する類似度を算出し、類似度が高いユーザーが購入した商品を対象ユーザーにレコメンドする仕組み)と、アイテムベース(商品(アイテム)同士の類似度を算出し、対象ユーザーの行動分析結果を基に商品Aを購入したユーザーが商品Bも購入しやすいと分かると、商品Aを購入したユーザーに対して商品Bをレコメンドする仕組み)に大別できます。

ユーザーベースのレコメンデーションを始める場合、サービスを始めたばかりはユーザー情報が当然まだ少なく、有効なレコメンドをすることができないという「コールドスタート問題」があります。アイテムベースは商品・サービスの類似度を中心にした仕組みなので、コールドスタート問題をカバーする手になり得ますが、弱点もあります。商品・サービスが増えるにつれて、それら同士の類似度を評価・管理するのに手間が増えていくことや、すでに保有している商品・サービスを何度もレコメンドしてしまうことなどがあります。なお、こうしたお互いの弱点を補うために、両方を組み合わせて最適化を図る手法はハイブリッドレコメンドシステムと呼ばれます。

さらにパーソナライゼーションの性格を強めた手法の一つに「多腕バンディット」があります。バンディットとはスロットマシンのことで、多数用意されたバンディットを限られた回数操作して払戻金をいかに多く得るかという問題に例えて名付けられました。言い換えると、払戻金という報酬が多く得られる方法を学習するという、強化学習の一種です。この派生手法に当たるのが「文脈バンディット」で、例えばある人が職場にいるときは反応されたが自宅にいるときには反応されなかったレコメンデーションは「その人にとって職場向きのレコメンデーション」として、居場所という文脈を考慮して学習していくことです。

レコメンデーションにおいて、どこからどこまでがパーソナライゼーションたり得ているかの明確な線引きはありません。しかし文脈バンディットのように居場所まで考慮したレコメンデーションは、パーソナライゼーションの度合いが高いと言えるでしょう。

なお、当社Laboro.AIでもこうしたパーソナライゼーションAIの開発実績を保有しています。味の素様に向けて開発を支援したアプリ「勝ち飯®AI」は、アスリートが入力・記録したデータからパーソナライズされた献立を提案するものです。献立というユーザーが毎日参照するものであること、ユーザーによって嗜好性が異なるものであることを踏まえて、大量のレシピの組合せからパーソナライズされた最適な献立提案を行うことを実現しました。

ビジネス成長に向けたポイント

商品・サービス提供におけるパーソナライゼーションを最適なものにできれば、カスタマーエクスペリエンス(CX、顧客体験)が向上し、より売上への貢献も期待できます。しかしその際、商品・サービス提供に付随して提示する情報も大量かつ複雑になり、今以上に人力では対応できず、AIの力を借りる必要も増えるでしょう。

一方、前述の通り、ユーザーの所在地や過去に検索したキーワードといった個人情報を活用している面もあり、プライバシー保護は欠かせません。2022年に米国の18歳以上1000人を対象に実施された調査では、49%が「自分のデータが保護されているという感覚はパーソナライゼーションよりも価値がある」と回答した一方、53%は「媒体が何であれブランドと関わるたびにユニークでパーソナライズされた体験を期待している」と答えています。プライバシーを守りたいのと同じくらい、パーソナライゼーションへの期待もあるということです。

今後のパーソナライゼーションの進展においては、プライバシー保護とCXの向上を両立させることが必須となりそうです。さらにはそこに関わるAI技術も日々進化していることから、その動向を追いながら導入内容を検討していくことが、ビジネスにおけるパーソナライゼーション活用のポイントになるはずです。

参考
デジタル大辞泉「パーソナライズ(personalize)
Adobe Experience Cloud「マーケティングにおけるパーソナライゼーションとは?MAとの組み合わせや注意点
Laboro.AI「潜在意識も刺激する、AIを用いたレコメンデーション
DESIGN JOURNAL「パーソナライズドレコメンドを実現するには?仕組みと実現方法をご紹介
日本経済新聞「Netflixの屋台骨 「AIレコメンド」技術最前線
Laboro.AI「パーソナライズ献立提案「勝ち飯®AI」
ZDNET「CX視点で見るエンタープライズITの未来 第2回:大規模パーソナライズに生成AIが欠かせない理由
Braze「消費者にとってのプライバシーとパーソナライゼーション:透明性の重要性

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