Laboro

Laboro.AIコラム

AIはトレンドか。アパレル業界のAI活用

2021.8.11

概 要

昨今の新型コロナウイルス感染拡大の煽りも受け、業界の主要な企業の多くが赤字になるなど、苦戦を強いられているアパレル業界。アパレル業界ではファッションアイテムのトレンドをつかめなくなってきているといった指摘もあり、打開策を見つけることは簡単ではなさそうです。そこで期待されているのが、AIをはじめとした最新テクノロジーの活用です。今回のコラムでは、アパレル業界における課題やAI活用事例をご紹介します。

目 次

アパレル業界の課題
 ・廃棄問題
 ・人件費問題
 ・トレンド予想の難しさ
アパレル業界でのAI活用事例
 ・トレンド予測
 ・アパレルECサイトでのチャットボット導入
 ・AI骨格診断サービス
 ・未来購買パターン予測にもとづく商品レコメンド
アパレルAIに「ソリューションデザイン」を

アパレル業界の課題

アパレル業界が抱えているとされている課題について、改めて振り返っていきましょう。

廃棄問題

近年、国内のアパレル業界で大きな問題とされているのが、少子高齢化やライフスタイルの多様化、若年層の購買力低下などを背景とした、需要と供給が釣り合わないことによる廃棄問題です。大量に抱えることになった在庫商品をセール品として売り切るという手段も考えられますが、ブランド価値を大きく毀損する可能性もあるほか、持続性がある方法とは言えません。

そこで、アパレル業界で注目されているのがAIを活用した在庫管理システムの導入です。若年層向けのカジュアルファッションブランドを展開するストライプインターナショナルでは、2019年度の事業計画の柱として AIによるデータ分析の強化による仕入れ高の大幅削減(350億円削減)を掲げ、在庫最適化の検証を実施したところ、セールを含む値引き率が大幅に改善されたことが報告されています。このように今後、各社でAIによる発注の適正化、値引きの適正化など、仕入れ高の削減に向けた取り組みが進んでいくことが予想されます。

出典:テレ東プラス 「15億着の”売れ残り服” 多くが廃棄される現実…その衝撃の現場を取材!:ガイアの夜明け」

人件費問題

ファッションアイテムが売れない状態が続いた場合、経営を圧迫するのが人件費です。アパレル業界ではバブル崩壊後、多くの企業が生産拠点を海外に移し商品単価を下げる努力を行ってきた歴史があります。しかし、その一方で輸送費や販売費などがかさみ、その代償として人件費が犠牲にされてきた経緯もあり、現在でも人件費が大きな課題となっている企業が多いと言われています。

商品を売るためには当然ながら人材が必要ですが、人件費が低いと十分にスタッフを確保することもままなりません。アパレル業界の人件費にまつわる問題には、歴史的な背景も含めた多くの課題が複雑に絡み合っており、一筋縄では行かないのが現状です。

トレンド予想の難しさ

アパレル業界特有の難しさとされるのが、プロダクトライフサイクルの短さであり、これは裏を返すと流行の移り変わりの速さと、トレンドをつかむことが年々難しくなっているということです。ある報告では、現代の若者が特定のブランドやショップにこだわらなくなってきたことがその背景にあり、どのブランドの服を着るかではなく、気に入った服をどうコーディネートするかという点を重視している傾向があるためだとも言われています。

出典:NISSEN DIGITAL HUB 「アパレル界でAIはどう活用できるのか【利益率が上がる理由とは】」

アパレル業界でのAI活用事例

アパレル業界の課題を解決する手段の1つとして期待されているのが、AIをはじめとした最新テクノロジーの活用です。とくにAIは人間では判断が難しいような直感的な意思決定や大幅な効率化に貢献するものとして、その活用が進められています。

トレンド予測

トレンドの予測で活用が期待されるのが、AIによる時系列データ分析です。トレンドとはすなわち、流行と次の流行が時間軸に沿ってに並んでいるもののため、それぞれの事象に関わるデータを数値的に把握することができれば、一定の規則性が抽出でき、将来予測ができることも期待できます。

また、画像認識・解析にAIを活用することで、次に売れる商品をAIに予測させるような取り組みも進んでいます。実際には学習データの収集や学習精度に難しさがあることも想像されますが、例えば、過去に売れたファッションアイテムの特徴や逆に売れなかったアイテムの特徴を学習し、次に売れるであろう商品のデザインを予測するといった活用方法が考えられます。

株式会社ニューロープが開発した「#CBK forcast(カブキフォーキャスト)」は、SNSやECサイト、各種メディアなどに掲載されているファッションスナップから、カテゴリー・色・柄・シルエット・素材など約600種類のタグと顔認識による性別・年齢などの推定情報をかけ合わせ、1,000万点以上のアイテムを分類・蓄積したデータからなるファッション特化型の画像認識AIです。

出典:NISSEN DIGITAL HUB 「アパレル界でAIはどう活用できるのか【利益率が上がる理由とは】」
出典:TECHABLE「ファッションアイテムのトレンド情報を時系列で分析する「#CBK forecast」」

アパレルECサイトでのチャットボット導入

多くの業界で導入が活発になっているのが、ECサイトへのチャットボットの導入です。規則的なパターンがある範囲に限られますが、自動応答を可能にするチャットボットは、電話などの問い合わせを面倒に思う若年層との顧客接点を作れることや、24時間対応ができるなどの利点があります。

アパレル業界で、ECサイトにチャットボットを導入して売上増加につながった事例としては、若者に人気のアパレル大手WEGO(ウィゴー)が、Microsoftが開発した女子高生チャットボット“りんな”を採用し、“女子高生りんながウィゴーでアルバイトしてみた”という設定でEC上に登場させ、顧客との会話の中で学習し成長していくAIチャットボットを導入しました。

出典:Microsoft「『女子高生AI りんな』をウィゴーがアルバイト採用、E コマースサイトでファッションアドバイスを提供」

AI骨格診断サービス

20代後半~30代前半の働く女性をターゲットとしているファッションブランド「Andemiu(アンデミュウ)」が2021年3月にリリースしたのが、生まれ持った体のラインの特徴や質感から自分に似合うファッションを見つける「AI骨格診断サービス」です。体のパーツ写真からその人の体型に合わせてAIが3つのタイプに分類し、その骨格タイプに似合う服を選ぶことで自分にぴったりのファッションを見つけられるというサービスとのことです。

出典:Andemiu「AI診断キャンペーン」

未来購買パターン予測にもとづく商品レコメンド

こちらは当社の開発事例です。アパレル企業のECサイトでは、顧客が閲覧した商品履歴に基づいて商品レコメンドを表示する機能が一般的ですが、その機能を十分に活用できていないケースも多々あります。Laboro.AIでは、十分な量のデータを保有しながらも、それを活用しきれていないという大手ショッピングサイト様に対し、LSTMという自然言語処理で多く用いられる時系列を加味することを得意とするアルゴリズムを用いたレコメンドシステムを提案しました。

Laboro.AIが開発したこのカスタムAIでは、顧客がどの商品を見たかだけではなく、どの順番で見たか、先月は何を見て今月は何を見ているのかなどの情報も加味し、時系列で商品レコメンドを出すというもので、変化しやすいアパレルのトレンドに即したレコメンドを可能にしたものです。

この事例について詳しくは、以下の事例ページをご覧ください。
参考:未来購買パターン予測にもとづく商品レコメンド

アパレルAIに「ソリューションデザイン」を

上記のような従来からある課題に加えて、冒頭にも触れましたが、近年は新型コロナウイルスによる消費スタイルや買い物スタイルの変化も、アパレル業界に大きな打撃を与えています。また、「メルカリ」や「ラクマ」といった個人間で商品の売買が完結するCtoC市場の台頭が、従来のBtoC型のアパレルビジネスに与えている影響も少なくありません。

AIはあくまでツールとしての技術に過ぎず、根本的にはビジネスモデルや店舗運用の見直しを前提として考える必要があります。私たちLaboro.AIでは、AI技術開発に加え、ビジネスデザインまでを含めた概念を「ソリューションデザイン」と呼んでいますが、外部環境が大きく変化し、半ば強制的に転換期を迎えることとなったアパレル業界とっては、AIという技術そのものを単に導入するだけではなく、このソリューションデザインの視点がとくに重要になっていると考えられます。

カスタムAIの導入に関する
ご相談はこちらから

お名前(必須)
御社名(必須)
部署名(必須)
役職名(任意)
メールアドレス(必須)
電話番号(任意)
件名(必須)
本文(必須)

(プライバシーポリシーはこちら