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Laboro.AIコラム

AI創薬【ビジネス成長のためのAI用語】

2024.6.14
株式会社Laboro.AI リードマーケター 熊谷勇一

用語解説

AI創薬とは、AIを活用して新しい医薬品を開発することを指します。従来、創薬には時間などの膨大なコストがかかり、新薬が市場に出るまでに多大なリソースを要しました。しかしAIを活用することにより、化合物の設計やドッキングシミュレーション(低分子・生体高分子間相互作用における複合体の安定構造を コンピュータ上で計算的に推定する手法)、創薬ターゲットの特定、病理画像解析による薬効・安全性の評価、自然言語処理を用いた論文検索などを、迅速かつ効率的に実施できる可能性が出てきました。さらにAIは膨大なデータから、人間では分からなかったパターンを見いだすことがあり、これにより新しい創薬が促進される面があります。

応用&詳細解説

三つの事例を基に説明します。

エーザイは、機械学習やディープラーニング等のAI技術を活用することで、より効率的に医薬品候補品を見出すことに取り組んでいます。大量の化合物についての評価データ(薬効、物性、薬物動態、安全性)で学習した機械学習やディープラーニングのモデルは、化合物を合成することなく、その化学構造から薬効、物性、薬物動態、安全性を予測することを可能とし、研究者による新規化合物の設計を支援するとしています。

富士通は理化学研究所と協働し、生成AIを使って、薬が標的とするたんぱく質の体内での状態を予測する技術を開発しています。「クライオ電子顕微鏡」と呼ばれる先端顕微鏡で撮影したたんぱく質の画像を学習して、動きのある立体構造として再現する生成AI技術のことで、薬が標的とするたんぱく質の形や動きを推定する作業を高速化できるとしています。代表的な物質の「リボソーム」を使った実験では、専門家が1日かけていた作業を2時間と10分の1以下に短縮しています。2025年3月期には製薬会社と実証実験を始める計画です。

日本医療研究開発機構が旗振り役となり、京都大学や武田薬品工業などが参加する創薬AIの共同プロジェクトもあります。AIは学習用のデータが多ければ多いほど、より精度が向上する傾向が高まりますが 、日本の製薬会社は欧米のメガファーマに比べて規模が小さく、1社だけでは創薬AIの学習データが十分にそろわないという弱点があります。そこでこのプロジェクトでは、連合学習という手法を用い、参加各者が持つ実験結果や薬剤の化学構造など、知的財産に関わるため機密性が高く、社外に持ち出すのは難しかったデータを連携させています。

連合学習とは、学習データセットが分散している環境下での機械学習モデルの学習法の一つです。従来の機械学習では、データセットが分散している場合、まずそれらを一つの大きなデータセットに集約し、それから機械学習モデルの学習を始めていました。しかし連合学習では、機械学習モデルを一つずつ学習させ、その結果得られた各モデルをマージし、それを各モデルに戻す、という流れを繰り返して学習を進めます。

ビジネス応用

AI創薬により、創薬のための時間などのコストを低減させられる可能性があることは、前述の通りです。さらなる応用としては、患者ごとの遺伝情報や病歴に基づいた最適な治療法を提案できることが考えられます。これにより、患者ごとに異なる治療効果や副作用を改善させられることも見込めます。

副作用については、過去の薬剤データや副作用情報を活用し、AIがリスクの高い化合物を排除し、さらに候補化合物の副作用を事前に予測することで、安全性の高い薬剤を早期に見つけ出せる可能性も出てきます。

このように、単に創薬に関わる業務・作業が効率化するということだけでなく、新薬の発見に向けたシミュレーションやパーソナライズ化を通して、一人ひとりの消費者とっての健康増進やウェルビーイングにつながる可能性が拓かれる点に、創薬AIの本質的な価値があります。また、製薬会社だけでなく、研究機関、保健所、公的機関なども含めたデータ共有プラットフォームの構築などを通じて、企業単体での活動ではなく産業全体が連携することになれば、より豊富なデータを元にした高度なAI予測も可能になってくるはずです。

こうした期待の高まりの一方で、AIによる創薬、具体的にはマテリアルズ・インフォマティクスやAIシミュレーションなどは、開発難易度の高いAI領域の一つでもあります。決してデータさえあれば良いというわけではなく、人命にも関わる分野であることからも、データの前処理はもちろん、目的に適したAIモデルの選択・設計、評価方法の検討など、専門的な知見を備えた上での慎重な検討を積み重ねていくことが肝要です。

参考
実験医学online「ドッキング

エーザイ「AIを活用した低分子医薬品候補のデザイン

日本経済新聞「富士通、生成AIで創薬速く たんぱく質状態予測10分の1

MSIISM「連合学習とは?Federated Learningの基礎知識をわかりやすく解説

中外製薬「AIを活用した新薬創出

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