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ソリューション
デザイナコラム

AI知識とビジネス視点を合わせ持つ当社のソリューションデザイナ(SD)が、AI開発・導入・活用のポイントを解説いたします。

“AI”のギャップが、ビジネスへの導入を妨げる

2020.6.22
代表取締役CTO 藤原 弘将

概 要

“AI”と聞いて、「人の代わりになるもの」と思う人もいれば、「限られたことだけできるもの」と思う人がいるように、そのイメージは人によって異なっているのが現状です。こうした認識の一致がないまま社内で“AI”プロジェクトが進んでしまえば、その結果がどうなるかは明らかです。AIをどう捉え、どう使うか、基本的ながら重要な点を考えていきます。

(*本コラムは、日刊工業新聞の連載『AI・ロボット転機予報part2』へ寄稿した内容を再編集したものです。)

目 次

“AI”という言葉の認識違い
AIは単機能で捉える
カスタマイズ発想で組み合わせる
単機能さを俯瞰して、共有する

“AI”という言葉の認識違い

ビジネスの文脈で“AI”という言葉が使われる時、それが何を指しているかという認識にギャップを感じることが少なくありません。2012年以降、ディープラーニングが一気に注目を集めるようになってからとくに聞かれるようになった「AIは万能なもの」「AIが仕事を奪う」という極端なイメージは減ってきているようです。ですが、今なおAI技術ができることについては、過大なイメージを持たれている方が多いようにも感じます。

ビジネスにAIを導入するとなった場合、社内外のステークホルダー間でこの“AI”という言葉が意味するところの認識が合っていないと、同床異夢になってしまい、AI導入の成功率は下がってしまいます。

AIは単機能で捉える

少なくともビジネス活用という文脈では、AIは単機能の様々な技術の集合体と捉えるべきものです。そしてその単機能の度合いは、例えば、音声をテキストに変える技術(音声認識)や、画像を見て何が写っているかを判定する(画像識別)といったレベルで、一般的に想定される範囲よりずっと狭いのが実際です。各技術ができることは非常にシンプルで、単体では必ずしも現実のビジネス課題が解決できるとは限りません。

もう少し具体的な例で確認してみましょう。例えばfacebookなどで写真をアップロードすると、写っている人が誰かを示すタグが自動的に付けられる機能があります。これはユーザー体験という視点から見ると一つの機能ですが、技術的には複数の単機能AIが組み合わさっています。写真の中で顔がどこにあるかを探すAI(顔検出)と、顔で目や鼻などのパーツを探すAI(キーポイント検出)、顔同士を比べて同じ人かどうかを判断するAI(顔照合)の3つから構成されるのが一般的で、それぞれは個別の学習データを使って個別に構築されます。

カスタマイズ発想で組み合わせる

人間の感覚では一見シンプルそうなことでも、AIで代替しようとすると予想外に複雑な構成になってしまう場合もあれば、逆に複雑そうに見えても実はシンプルな構成のAIシステムで実現できる場合もあります。つまり、ユーザー目線でのAIができることと、技術的な観点でどのような技術をどう組み合わせて実現するかにはギャップがあるということです。

この前提に基づくと、ビジネスにAIを導入する場合には、AI技術を「選定する」という発想ではなく、AIソリューションを「カスタマイズする」という発想、言い換えれば、どんな技術をどう組み合わせて解くのかを創造的に考えることが重要になってきます。

もちろん、パッケージAI製品など汎用性を売りに発売されているようなソリューションで解決できる課題であれば、それを導入するのが近道です。ですが、解くべき課題が企業にとって重要性が高いもの、競争力に関わるものなど、企業の本業・コア業務に近づくほど、汎用的なパッケージAIでは対応できるケースは少なくなり、カスタマイズが必要になってきます。

単機能さを俯瞰して、共有する

AIをカスタマイズするためには、解決すべき課題の深い理解に加えて、AI技術に関する全体像を捉えられる知識も必要になります。これは、エンジニアや研究者のレベルで技術的詳細を理解すべきということではありません。単機能のAI技術が、どんな入出力でどの程度の精度が達成されているかを広く俯瞰的に把握するということです。

この理解がステークホルダー間で正しく共有できれば、AI導入の成功確率が格段に上がるはずです。