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Laboro.AIコラム

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化学のような、AIと産業の融合。MIの新価値

2021.10.1

概 要

国内を代表する輸出産業の一つである化学業界では、近年、「マテリアルズ・インフォマティクス(MI)」をはじめとしたAI技術の活用が注目を集めており、研究における新たな付加価値の醸成や効率化を目指す動きが見られるようになっています。一方で、他国にシェアを奪われている領域も少なからず存在し、研究開発スピードの向上が課題にもなっているようです。 今回のコラムでは化学分野におけるAIの活用、とくにマテリアルズ・インフォマティクスを中心に、事例をまじえながらご紹介していきます。

目 次

化学業界の現状と課題
化学へのAI導入メリット
 ・マテリアルズ・インフォマティクス(MI)
 ・実験の自動化
 ・安全性の確保
化学×AIの活用事例
 ・材料開発の高速化
 ・ゴム配合物性値予測システム
 ・安全管理ソリューション
テクノロジーとビジネスの化学融合

化学業界の現状と課題

自動車業界に加え、日本の輸出産業を代表する化学業界。これまで多くのイノベーションを生み出し、国内だけでなく国際的経済や社会の発展に貢献してきました。化学の進化によって国内で作り出される数々のマテリアル(素材)は、国際的にも競争力を保有する一方で、蓄電池に代表される組み合わせ型製品では世界シェアを他国に拡大されてきており、マテリアル系ベンチャーもなかなか成長できていない現状が指摘されています。

こうした状況を打破するため、AIを始めとしたデジタル活用が期待されています。とくに機械学習技術を用いたマテリアル開発を加速させる「マテリアルズ・インフォマティクス」の分野が注目を集めており、効率的かつスピーディ、そして新たな製品開発に寄与することを目指した活動がさまざま進められています。

出典:経済産業省「マテリアル革新力強化のための政府戦略に向けて」

化学へのAI導入メリット

化学分野では、その活用範囲はまだ限定的ではあるものの、マテリアル開発を始めとしたさまざまな領域でAIの活用が進められています。AIを導入することによるメリットとしては、以下のような効果が期待されます。

マテリアルズ・インフォマティクス(MI)

「情報科学」の意味を持つ「インフォマティクス」ですが、マテリアルズ・インフォマティクスでは、AI・機械学習技術の他、超高速演算が可能なスーパーコンピュータ、大規模な材料科学データベースなどが活用されます。例えば、過去の論文を学習させることで分子構造の予測するといった取り組みなど、各種マテリアルに関する情報を高度処理することを通して、研究開発の効率化・生産性向上に寄与することが期待されます。

出典:HITACHI「マテリアルズ・インフォマティクスとは」

実験の自動化

化学研究においては、新しいマテリアルを開発するための化学実験が欠かせませんが、AIを活用して実験の一部、あるいは将来的にはすべてのフェーズを自動化できるようになることが期待されています。

現時点で実用に至っているものとして自動化を実現しているケースは実験過程の一部に留まっていますが、例えば、イギリスのリバプール大学では試薬を加えるところから効果測定をするまでの一連の流れを全自動で行う実証実験が行われています。この実験では、AIを搭載したロボットが数時間にわたって安定的に稼働し、化学実験の各フェーズを全自動で行うことに成功しています。

自動化のための視点としては、大規模な化学実験を自動化するのは難しい場合が多く、まずは小規模な実験室でプラント装置を小さくまとめることから自動化の試みを始めることにより、その可能性を高めていくことも重要です。

化学実験の自動化は、効率化の面だけでなく、実験における事故防止などの安全管理面、また実験に従事する時間が限られている研究員のサポートをするこによる衛生面においても効果が期待される重要な取り組みの一つです。

出典:chem-station「自律的に化学実験するロボット科学者、研究の自動化に成功」

安全性の確保

上でも少し触れましたが、実験室やプラント工場では危険物の取扱いも多く、研究員や作業員の安全性の確保が重要になります。そのため、安全性の確保に向けたAIの活用も期待される領域です。例えば、プラント工場内に設置されたIoTセンサーやカメラ等から得られたデータをリアルタイムに分析し、異常の兆候を通知するといった活用はその一つです。また、工場設備の腐食といった損傷をカメラ画像から判定し、適切なタイミングでのメンテナンスにつなげるといった活用も考えられます。

重大事故にもつながりかねない実験現場や製造・合成現場では、AIの出力結果の信頼性を十分に担保する必要があるため、現段階での活用範囲は限定的ですが、今後安全性の確保に向けた益々の進展が期待されます。

出典:経済産業省「石油・化学プラントのAIを活用したスマート化を促すため、ガイドラインと事例集を策定しました」

化学×AIの活用事例

マテリアルズ・インフォマティクスを中心に、化学業界でのAの活用事例をご紹介していきます。

材料開発の高速化

マテリアルズ・インフォマティクスを活用することにより、少ない実験回数で新素材の最適な組み合わせを発見できたというのが、住友化学の事例です。このケースでAIによって発見された組み合わせは、研究者が想定しなかったものであり、AIの予測性能が成果につながった事例だと言えます。

当初課題としてあったのは、これまでの実験を重要視するスタンスでは細分化したニーズに対応できなくなったという状況でした。マテリアルズ・インフォマティクスによりAIを活用した分析を行ったところ、100万以上ある比重の組み合わせから良好な組み合わせを絞ることに成功。たった20回の実験により、研究者も想定してなかった組み合わせが、新素材に最適な結果が得られたとのことです。

出典:日経クロステック「MIで先陣を切る住友化学、材料開発で驚きの効率化」

ゴム配合物性値予測システム

横浜ゴムが2020年より実用を開始したのが、タイヤ用ゴムの配合設計をAIによって支援するシステムです。このシステムは、技術者がゴム素材の配合設計のパラメータを入力すると、AIがその配合における物性値の予測を出すというものです。

ゴム素材の配合設計は従来であれば実際に配合してみなければその物性値を知ることはできませんでしたが、AIによる予測を行うことで、実際には実験を行わずに結果を予測する仮想実験が可能となります。これにより、経験の少ない技術者でもハイスピードでゴム素材の開発ができると期待されており、高性能な製品の開発にもつながることが見込まれています。

なお、このシステムは、横浜ゴムが2020年に策定したAI利活用構想「HAICoLab(ハイコラボ)」に基づいて開発されています。HAICoLabは、単にAI技術を活用していくだけでなく、AIの得意分野である膨大なデータの分析と人間の持つ発想や閃きをかけ合わせて「協奏していく」というコンセプトで成り立っているとのことです。

出典:横浜ゴム「横浜ゴム、AIを活用したゴムの配合物性値予測システムを独自開発」

安全管理ソリューション

こちらは当社ソリューションです。直接的な化学業界でのケースではありませんが、上でも触れたように多くの危険物を扱う実験現場やプラント工場では、研究員・作業員の安全確保が重要な取り組み事項に挙げられます。

Laboro.AIでは、作業現場に設置した監視カメラや携帯デバイス等の動画映像を元に、事前に学習させた特定の対象物や行動・シーンを自動で検出し、リアルタイムに危険な状況を察知したり、これらシーンの映像だけ簡単に見返せるようにすることで、ビジネス現場での安全管理業務の自動化・効率化を実現するソリューションを『安全管理ソリューション』として、個別開発を承っています。

ご参考:Laboro.AI 『安全管理ソリューション』

テクノロジーとビジネスの化学融合

膨大なデータを学習することにより規則性やパターンを見つけ出すことを得とするAI・機械学習技術は、化学業界においてさまざまな形で活用されています。とくにマテリアルズ・インフォマティクスの活用は注目度が高く、効率化や生産性向上はもちろんのこと、新たな新素材や組み合わせを発見することへの期待も高まっています。より軽量、より頑丈、より安価と、これまで以上に優れた素材が発見されることは、私たちの身の回りのあらゆる物の構造を変化させることへとつながり、ダイレクトに生活者へのプラス影響をもたらすはずです。

化学でのAI活用、中でもマテリアルズ・インフォマティクスは、機械学習の活用分野の中でもとくに産業のドメイン知識が深く求められ、難易度の高い領域の一つです。現在のAI技術の可能性と限界を知った上で、技術を適切な形で化学の知識と融合させていくことが、AI活用においては求められます。当社では「テクノロジーとビジネスを、つなぐ」というミッションを掲げていますが、まさに化学融合のように、AI技術と産業の2つのドメインが適切に組み合わさることが、次への進化をもたらすはずです。

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