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5Gの普及は、AIに何をもたらすのか

2020.12.28

概 要

5Gを使った通信サービスが日本でもスタートし、これまで実現できなかったさまざまな技術やサービスへの活用が期待されています。実はこの5G、企業でのAI活用を考える際にも無視できない存在になりつつあります。このコラムでは、5Gの特徴やAIとの関係などについてご紹介していきます。

目 次

5Gの特徴
 ・超高速・大容量
 ・超低遅延
 ・多数同時接続
5GがもたらすAIへの影響
 ・膨大なデータ処理を可能にする技術要因
5G環境におけるAI活用事例
 ・交通状況の把握や自動運転技術
 ・診断の高精度化や遠隔医療
5Gの普及に向けた課題
 ・環境整備に必要なコスト
 ・増加するIoT機器へのサイバー攻撃
5Gの動向をつかむ

5Gの特徴

そもそも5Gとは「第5世代移動通信システム」を指す言葉で、現在主に使用されている4Gよりも遥かに高性能な移動通信システムとして期待されています。日本では2020年が5G元年となりましたが、アメリカでは2018年に大手キャリアがサービスを開始、韓国・中国でも2019年から広く使われるようになるなど、世界各国で導入が進められています。

4Gが世界中で普及したことにより、通信の大容量化が進み、多くのユーザーのニーズはすでに満たされたとも思われますが、5Gの普及によりさらに大容量で高速な通信インフラの構築が目前のものになりつつあります。

超高速・大容量

5Gの特徴の1つとして挙げられるのが、従来を大きく上回る高速・大容量通信です。現在主流になっている4Gの通信速度は最大で1Gbpsほどと言われますが、5Gは最大20Gbpsと4Gの約20倍の高速通信を実現する技術と言われています。

4Kや8Kなどの高品質な動画コンテンツの配信、ウェアラブルデバイスの普及、セキュリティ技術や医療の進化など、多方面で通信デバイスが要求するトラフィック量が増加しています。2010年代に比べ、そのトラフィック量は、2020年代に1,000倍にまで増加するという試算もあり、5Gにはこうした大容量のトラフィックをさばき、快適な通信環境として整備されていくことが求められています。

なお、5Gを運用するにあたって新たに使用される電波周波数帯域のうち、ミリ波と呼ばれるとくに高速かつ大容量通信に長けた帯域は、2020年12月時点ではまだ使用されておらず、最大20Gbpsの通信速度は、今後実現されていく話ではあります。

超低遅延

通信の低遅延性も5Gの大きな特徴です。数十ミリ秒ほどとされる4Gの遅延に対し、5Gではその10分の1にまで短縮され、数ミリ秒ほどの遅延で通信できると言われています。

無線通信においては1ミリ秒以下の低遅延も求められるケースも少なくなく、これが実現すれば車と車の通信による事故の回避などが可能になるほか、医療現場やロボットの遠隔操作、ウェアラブルデバイスの接触通信などに5Gの低遅延性が貢献することが期待されています。

多数同時接続

複数のデバイスと同時接続できることも、移動通信システムに求められる重要なポイントです。4Gでは1k㎡あたり約10万台のデバイスに接続できるとされていますが、5Gでは約10倍に増え、1k㎡あたり約100万台のデバイスに接続できるようになると言われます。ただ一方で、同時接続の需要がさらに増加するにつれて、4Gの100倍にもなる多数同時接続が今後求められるだろうという試算もなされています。

これまでは人と人の通信や、スマートフォンなどのデバイスを経由した人とモノの通信が主流でしたが、今後は、モノ同士がインターネットを介してつながる「IoT(モノのインターネット)」の増加が見込まれます。 一般家庭では電気メーターやガスメーター、白物家電など、また、ビジネスでは農業・畜産などでのセンサーへの活用が進んでいますが、将来的には自動車・電車など公共交通機関や移動サービスでもIoTの活用が進んでいくことが考えられます。

5GがもたらすAIへの影響

5Gの構築と整備が進み、高速・大容量通信が利用できるようになってくると、AIにも多大な恩恵がもたらされます。

AIで現在主流になっている技術が、コンピュータ自身が学習することで特定のタスクを高い精度で処理することを目指した「機械学習」です。中でも「ディープラーニング(深層学習)」は人間の作業をより少なく、より高精度に処理できる技術として期待される分野ですが、その精度を実現するためには、AIに学習させるための膨大なデータが必要となります。こうしたビッグデータを収集する際に大きな鍵になるのが、先ほどもご紹介したIoTです。

IoTはモノが直接インターネットにつながっていることから、センサーから得た情報を常にクラウドに送信し、データを蓄積していく技術とも言えます。スマートフォンが送信するデータや、農業用センサーから取得される天候データ、カメラから把握される人の動きのデータなどはその例です。

5Gが普及すれば、IoTデバイスの受発信に基づく膨大なデータ通信にも耐えられるようになります。伴って、AI開発に必要なビッグデータを効率良く収集できるようになっていき、その結果、開発されるAIモデルの精度向上に貢献することが期待できます。

膨大なデータ処理を可能にする技術要因

5Gは4Gよりも高速・大容量、低遅延、多数同時接続が魅力の移動通信システムですが、このシステムは高周波数帯の帯域を新たに使用することで実現しています。

4Gに使用されているのは主に数百MHz~2GHzの帯域でしたが、4Gを含めさまざまな通信でこの帯域を使用しているため、5Gでは「サブシックス」と呼ばれる6GHz以下の帯域、およびミリ波と呼ばれる28GHzの帯域を使用します。さらに将来的には、100GHzまで使用することが検討されています。これにより、4Gとは比べ物にならないほどの帯域幅を確保できることになります。

こういった高周波数帯を使用することで高品質な通信が可能となりますが可能が、高周波数帯は減退が大きく、電波の直進性も強いため、基地局の近くにいて遮蔽物がなければ使えないという弱点があります。そのため、5Gの実現にあたっては、ビームフォーミングという技術を改良し、超多素子アンテナを使用するなどして弱点克服が目指されています。

5G環境におけるAI活用事例

5Gの開始と普及に合わせて、すでにAIを用いたさまざまな新しいサービスが模索されています。

交通状況の把握や自動運転技術

5G環境が構築されることにより、多数のカメラを用いた交通状況のリアルタイム把握が可能になると言われています。これにより外出前の混雑状況や最適経路のチェックが、今以上に便利になることが期待されます。

また、車同士が通信できるようになることで、自動運転技術の発達も加速すると言われています。車同士の距離、歩行者との距離、車や歩行者の動きなどがリアルタイムに観察・計算されることにより、安全性や走行の安定性が増し、より実用的な自動運転技術が登場してくると期待されています。

AI技術を活用した未然の事故防止や、渋滞の緩和などの試みはすでに一部で取り組まれていますが、超高速・超低遅延・多数同時接続を可能にする5Gが自動車などのモビリティーや交通インフラへ浸透することによって、これらの精度がより高まっていくと考えられます。

診断の高精度化や遠隔医療

医療分野でも、5GとAIの活用が大きく広がっていくと言われています。例えば、ベテランの医師でも診断を誤るような難しい症例について、AIを用いて画像分析することで誤診断数を低下させるといった例が登場しています。5Gにより高精細な画像が高速通信できるようになれば、さまざまな医療現場で医師がAIを活用し、より高精度な医療を提供できるようになっていくかもしれません。

また、高度な医療を受けるためには、多くの場合で主要都市圏に行かなくてはならない現状がありますが、5Gの特徴である超低遅延を活かしたAR技術によって、遠隔でも医師から直接診断を受けられるホログラムの実証研究も進んでおり、距離に関わらず、全ての人により高度な医療を提供するための努力が重ねられています。

5Gの普及に向けた課題

私たちのビジネスや生活が大きく変化することも予期させる5Gですが、いくつかの課題もあると言われています。

環境整備に必要なコスト

改良されたビームフォーミング技術を用いるなどの対策を行っても、5Gの普及には多数の基地局が必要であるなど、インフラの整備に膨大な費用が必要です。2020年12月現在の日本の5Gサービス内容も限定的なのが実際で、超低遅延性などの特性も、性能としては限られたものなってしまうことが懸念されています。

増加するIoT機器へのサイバー攻撃

5Gが普及するにつれ、インターネットにつながるIoT機器は当然ながら増加していきます。現在のPCやスマートフォンだけでなく、これまではインターネットにつながっていなかった時計やエアコン、洗濯機、メガネ、自動車などさまざまなものが接続されていくことが見込まれる一方で、サイバー攻撃を受ける危険性もその分高まっていくことになります。

5Gの動向をつかむ

AIだけでなく、私たちの生活にも大きな変化と影響をもたらすことが期待される5Gですが、その普及は段階的なもので、すぐさま私たちの生活に大きな変化が起こるものではないと予想されます。今後、間違いなく次々と登場してくる5G関連の情報を早い段階つかみ、その普及と進化の動向を把握しておくこと、またAIと掛け合わせることでどのような発展系が見据えられるかを想像し、ビジネスでどう活用していくかの絵を描いていくことが重要です。

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