Laboro

プロジェクト事例

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  • 異常検知

防衛装備品の製造におけるAIによる外観検査

沖電気工業 株式会社様

  • 製造装置の検査作業に画像分類AIによる外観検査を適用
  • 人による目視確認を補助し、精度向上と効率化を実現

取り組みの背景

防衛産業においては、製造工程の高度化・効率化がこれまで以上に重要になっています。沖電気工業様では、防衛装備庁様との契約に基づいて防衛装備品の製造工程へ先進技術を適用する取り組みを進められてきました。

課題

今般対象となった防衛装備品の製造工程の一つに電子基板へのチップ配置があります。チップを基板に配置する際には吸着ノズルが使われますが、このノズルに詰まりなどの異常があると、チップを吸着して持ち上げられないなどの問題が発生します。そのため、ノズルは定期的な洗浄が必要であり、さらに洗浄後に異常がないかどうかの検査も必要になります。

従来、ノズルの異常検査は、ノズル先端部の画像を撮影し、その画像をモニターに表示して人が目視確認していましたが、経験と手間を要する業務の一つでした。こうした状況を受けて沖電気工業様では、検査精度の向上と作業時間の短縮を目的として、Laboro.AIと共にAI検査システムの実証実験を進めることになりました。

開発内容

画像内の異常検出には、一般的に三つの手法(画像分類、物体検出、セグメンテーション)が候補になります。今回は、1枚の画像にはノズルは1個のみ映ること、OK(異常なし)とNG(異常あり)の二つのどちらに判別すれば良いことなどから、比較的シンプルかつ今回の要件を十分にこなせるがゆえに、最も早く・精度良く実現できる画像分類のアプローチでAIの開発を進めました。

精度を改善するためには、画像内のノズル先端部箇所の切り出しといった前処理や、AI出力スコアに基づくOK/NG判定ロジックといった後処理も加えました。そして全体では計26回のAIモデル開発を繰り返し、最高精度のモデルを採用しました。

成果

今回の実証実験では、製造工程の現場で65回(画像748枚)の実地評価を行い、「見逃し率1.9%、虚報率20.9%」(見逃してしまったケースについても原因・対応方針は明確)という十分に高い精度を実現するに至りました。現場からも「ほとんど見逃しがなく、AI判定を信用できる」とコメントがあり、検査自動化の第一段階(実証実験)を順調に達成できたと考えています。今後は、AI判定結果NGのみを目視検査の対象としたり(第二段階)、目視検査を廃止したり(第三段階)といった検査自動化を目指します。

また、今回の実証実験では、製造工程の現場で使用するための検査ソフトウエアも開発しました。検査自動化の実現性を実地評価し、現場で受け入れられる信頼感を醸成するためには、AIモデルだけでなく、現場で使いやすいソフトウエアを素早く開発することが欠かせません。さらに、このソフトウエアではAI判定結果に対する人の評価結果が自動的に記録されます。こうして蓄積した見逃し・虚報データによってAIモデルの精度改善も期待できます。

今後の展望

当社では、チップをノズルで吸着して基板に配置するという工程が、さまざまな電子機器の製造工程に共通することから、今般の成果が幅広い製造工程に展開できると考えています。

さらに、正常・異常を判断する2値分類は、製品・治具などの外観検査をはじめ、製造現場や建設現場など多くのビジネスシーンで必要とされるタスクです。AI判定結果を分かりやすく確認できる今般のようなソフトウエア開発も含めて、カスタムAIによる製造現場の高度化・効率化に引き続き貢献していきます。

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