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ソリューション
デザイナコラム

AI知識とビジネス視点を合わせ持つ当社のソリューションデザイナ(SD)が、AI開発・導入・活用のポイントを解説いたします。

AI導入現場から。企業が抱える検討課題の実際とは

2020.7.21
ソリューションデザイナ 上田知広

概 要

AI導入に対する企業の期待が高まる一方、“AI導入の壁”とも言える現実とのギャップが、その実現を難しいものにしていることが多くの調査で明らかになってきました。AI導入を検討する企業が実際にどのような点に課題を感じているのか、そしてそれらにどう向き合えばよいのか、多くのAI導入を支援してきた経験から、その実際を振り返っていこうと思います。

目 次

AI導入への期待と壁
検討課題の実際と、持つべき視点
 ・①自社内にAIについての理解が不足している
 ・②導入効果が得られるか不安である
 ・③導入費用が高い
まとめ

AI導入への期待と現実

IDC Japanが2020年6月1日に発表した調査によれば、2020年の国内のAIシステム市場は前年比43%増の1,172億円規模にもなると予想されています。新型コロナウイルスの影響による企業の投資意欲の冷え込みが懸念されつつも、AI導入に対する企業の需要は年々増加することが見込まれ、5年後の2024年には3,458億円にまで拡大、AIは企業にとっての重要なツールとして引き続き位置付けられていく様子が見て取れます。

国内AIシステム市場 支出額予測(2019年〜2024年)
(出所:IDC Japan、国内AIシステム市場予測

これら調査でAIの重要性が示される一方、情報処理推進機構(IPA)が国内68業種約7,000社に対するアンケート結果などをまとめた『AI白書2020』によれば、およそ80%の国内企業がAI導入に関心を持ちながらも、実際に導入している企業は全体の4%程度、PoC(Proof of Concept:実証実験)を行っている企業を入れても10%にも満たない現状が明らかになっています。

企業のAI導入状況
(出所:独立行政法人 情報処理推進寄稿(IPA)公表資料『AI白書2020』)

AIの著しい技術進歩を背景に企業からの期待が高まる一方で、「導入したいけど、導入できない」という多くの企業の現実が見えてきます。この”AI導入の壁“とでも言うべき難しさは、一体何が要因となって生まれてくるのでしょうか。

検討課題の実際と、持つべき視点

『AI白書2020』では、AI導入を「検討中/関心あり」と回答した企業358社に対して、検討にあたっての課題も調査しています。とくに理由として多く挙がった上位3つが次の項目です。

① 自社内にAIについての理解が不足している(55.0%)
② 導入効果が得られるか不安である(40.8%)
③ 導入費用が高い(36.0%)

当社にも多種多様な規模・業種の企業様、多種多様な部門の方からお問合せを頂きますが、最近の傾向としては、一昔前によくあった「何でもいいからAIを導入したい」といったAIへの過剰な期待は減り、AIを実用的なものにするためにどうすればよいかを、現実的に考えられているケースが増えていると感じます。

ですが、やはり導入前のコンサルティングフェーズでは、上記のような課題感をお持ちになり、ご相談いただくのが通常です。とはいえ、上の調査で検討課題として挙げられていた3つは、あくまで表面的な部分を表した回答に過ぎません。そこで以下では、この3つの課題について、現場でのヒアリングを通して私自身が感じていることをお伝えし、これからAI導入を検討される方々のヒントにしていただければと思っています。

① 自社内にAIについての理解が不足している

ある意味当然かも知れませんが、この点は、とくに最近AI導入の検討を開始された企業や、担当者に属人化する形でAIプロジェクトが行われている企業の方々から多く出てくるものです。一方、早い段階からAI導入に取組まれてきた企業では、例えば「データが不足している」「PoCを行ってもうまくいかず原因が不明」など、より具体的な課題に直面されています。

内容に違いはありますが、導入経験の有無やレベル感によって、こうした理解不足はあって当然で、これ自体は大きな問題ではないと考えられます。ですが、知識と経験の不足よって起こりうる、より重要な問題があります。それは、AIへの理解が不足しているため、AIを用いる場面イメージが想像できず、結果として、社内メンバー間で実際に利用する際のイメージがバラバラになってしまうということです。

AIを用いて何をしたいのか、どのようなデータを活用するのか、現場のどの業務を改善し、どのように評価し成果に結びつけるのかといったイメージが、当初段階で擦り合っていないと、結果、何を開発すればいいかの話もまとまらず、仮に開発できたとしても何の役に立つAIなのかよくわからないものが出来上がってしまうということも少なくありません。

持つべき視点

こうした事態を回避するためには、AI導入後のビジネス・業務の姿を「これでもか」というほど具体的に描いて、社内関係者と早期に共有・軌道修正していくことが重要になります。場合によっては、AI専門ベンダーの力を借りることも選択肢の一つです。AIは様々な面で不確実性が高い技術ではあるものの、たとえ最初は外れていたとしてもゴールイメージを具体的にすることで、ビジネス上の意義も技術的な実現可能性も、さらには様々な課題もクリアに見えてくるものです。

導入効果が得られるか不安である

過去にAI導入の経験を持っていても、従来とは別のテーマやデータ、技術などを用いたチャレンジの場合には、この点は変わらず課題となります。つまり、類似の取組みで成功パターンを見出だしていなければ、必ず起こりうる検討課題だと言えます。

この背景には、AIの不確実性があります。これまでのIT系のツールとは違い、AI開発は予め成功が確約できるものではなく、データやパラメーター、モデルそのものなど、目指す精度や成果に向け、試行錯誤しながら調整&開発を進めていくプロセスを辿るのが普通です。実現可能性を一定程度で見極めることは可能なものの、同時にどこまでいっても「やってみないとわからない世界」であることを、AI導入においては前提として認識しておく必要があります。

持つべき視点

「導入効果が得られるか不安」という点を解消するためには、とにかく小さいPoC(実証実験)からでもチャレンジし、AIで実現できてビジネスに成果がありそうな点を少しずつ見つけ出していくという進め方が必要になります。

また、AIをはじめとする新技術の導入効果としては、よくROI(Return on Investment:投資収益率)が言われますが、そもそも「AIで実現すること」が明確になっていないと、何をリターンとするかも当然ながら事前に算出することはできません。導入を担当する方にとっては、社内で「ROIはどれくらいなのか?」というツッコミをうけるポイントになることも多いようですので、AIの評価と精度、そしてビジネスをロジックでつなげるための工夫が必要になってきます。①でお伝えした、早期からゴールイメージを具体化して軌道修正を続ける取組みは、ここにも効いてきます。

導入費用が高い

費用に関する心配は、多くの企業で認識されている点です。最近では、AIの研究開発(R&D)的な性質への理解が浸透してきたためか、金額に対する過剰反応は少なくなってきているものの、やはりまだ驚かれることも少なくありません。

たしかに手軽な価格で手に入るAIツールも出てきており、これらと比べるとAI開発は高額に見えるものも少なくありません。しかし、単純に費用のみで比較すると判断を誤る恐れがあります。なぜなら、価格は、テーマのレベル感の裏返しだからです。

持つべき視点

そもそも、当社の様なAIベンダーは、得意とする領域に応じていくつかに分類することができます。大きくは以下の4つです。

① アルゴリズムの開発から行うベンダー
② 一定程度に確立されたアルゴリズムの活用・実装をベースにカスタムでAI開発を行うベンダー
(↑当社が主に行うところ)
③ 一部個別開発が必要なソリューション開発行うベンダー
④ Saas型ツールやパッケージAI製品の開発・販売を行うベンダー

この場ではわかりやすさを優先して誤解を恐れずお伝えすると、上に行くほど個別開発、下に行くほどプロダクト販売の色が強くなります。「ライバル企業との差別化のために自社独自のAIを導入したい!」などの場合は、①や②の企業とタッグを組み、目的にあわせたAIの開発を行うのが有効です。この場合、技術難易度は高く、開発期間も長くなり、そそのため開発費用も高くなります。一方で、「他社と同じものでいいから早急に、簡単に使えるものを導入したい!」ということであれば、④のプロダクト製品が安く導入することができますが、当然ながらその用途の範囲は、一般的かつ限定的なものになります。

これらを一括りに「AI」として同じ土俵で比べてしまうと、用途も価格も正当に比べることが難しくなってしまいます。AIを用いて何を、どの程度のレベル感で達成したいかということを明確にすることが先決だと言えます。

まとめ

今回は、AI導入において課題とされている3点について、実際の導入現場で活動するソリューションデザイナという立場からその実際を振り返りつつ、これからAIを導入する企業の方々が持つべき視点をお伝えしてきました。

ご紹介した3つの課題は、AIの成功事例や失敗事例が一般に共有され、また各企業で少しずつが導入経験を積み重ねられていくことで、ある程度は解消されていくと思われます。ですが、AI技術の日進月歩ぶりを考えると、一筋縄ではいかない状況がしばらくは続いていくはずです。

その時々のAI技術でできること・できないことを的確に理解した上で、導入する企業固有の課題に対し、どのような投資規模で、どのようなAIを開発し、現場で活用していくのかを描き、実践するためには、多種多調な知識やノウハウ、スキルが不可欠です。当社のソリューションデザイナは、まさにこうした知見を備え、テクノロジーとビジネスをつなぐことを実現する役割を担っています。