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Laboro.AIコラム

事例から知る。機械学習の基礎と活用事例

2020.11.12公開 2024.1.26更新

概 要

人間の知能を模したコンピュータ技術と言われるAIの領域のうち、特に知られる技術が機械学習です。機械学習はコンピュータ自身が予測や分類などのパターンを学習していく技術で、すでにさまざまなサービスとして世の中で活用されています。機械学習について理解を深めながら、実際に私たちの生活で使われている事例についても紹介します。

目 次

機械学習とディープラーニングの違い
 ・機械学習の手法
  ・教師あり学習
  ・教師なし学習
  ・半教師あり学習
  ・強化学習
機械学習の活用事例
 ・①画像認識の活用
  ・データ化やダイジェスト作成
  ・顔認証
  ・異常検知・故障予知
 ・②音声認識の活用
  ・音声AIの家庭での活用
  ・コールセンターでの活用
 ・③自然言語処理の活用
  ・文書分類の自動化
 ・④分析・予測
  ・売り上げ・需要予測
  ・乗車予測
 ・⑤レコメンド
  ・献立のレコメンド
  ・目的地のレコメンド
機械学習がこれまでになかったサービスを創出していく

機械学習とディープラーニングの違い

機械学習は、大量のデータをコンピュータに読み込ませることでパターンやルールを学ばせ、予測・分類などのタスクを自動で行えるようにする技術です。例えば、リンゴの画像を大量に取り込ませて学ばせることでコンピュータはリンゴの特徴について学び、赤リンゴと青リンゴの画像の違いを特徴から抽出、次に来る新しいリンゴの画像を高い確率で分類するといったことが可能になります。

ディープラーニングは、機械学習と同様に現在のAI活用の文脈でよく語られる用語ですが、カテゴリーとしては機械学習の1種であり、機械学習を発展させたものでもあります。

主要な機械学習技術とディープラーニングの大きな違いは、「特徴量」を人間が指定するかコンピュータ自身が学習するかという点にあります。例えばリンゴの画像を分類しようとした場合、形に着目してしまうと赤リンゴと青リンゴを見分けるのは困難ですが、色に着目すれば見分けができそうです。この「色」が特徴量の一つで、ディープラーニングではコンピュータ自身が大量の画像を学習する過程で「色に着目すべき」と判断します。

機械学習の手法

ディープラーニングを含め、機械学習の手法には大きく分けて四つあります。

教師あり学習

赤リンゴか青リンゴかの違いを学習させる際、画像に「赤リンゴ」や「青リンゴ」のラベルを付けた上でコンピュータに学ばせることを「教師あり学習」と言います。教師あり学習では入力に対しての正解が示されているので、コンピュータはそのパターンを学習していきます。

画像の識別の他にも、身近な例としては、迷惑メールのフィルタリングにこの技術が使われています。安全なメールと迷惑メールにそれぞれラベルを付けて学ばせることで、コンピュータはそれぞれの境界線がどこにあるかを学び、次に来たメールが安全かどうかを判断できるようになっていきます。

教師なし学習

「教師なし学習」は、データにラベルを付けずにコンピュータに学習させます。ラベルがないのでコンピュータは正解が何か分かりませんが、与えられたデータの中から規則性や分類項目を見つけ出していきます。

教師なし学習の代表的な活用方法として、顧客データの分類が挙げられます。顧客データには性別や年齢、取引内容、取引の日付などが含まれていますが、リンゴの画像のように一意の正解があるわけではありません。しかしコンピュータは顧客データにさまざまな項目があることを学習し、データの分類を行うことができるようになります。

半教師あり学習

教師あり学習と教師なし学習の間に位置するのが、「半教師あり学習」です。教師あり学習を行いたくても、ラベル付きのデータを大量に用意することは困難なケースもあります。その場合は、少量の教師あり学習でパターンを学習させ、さらに教師なし学習でその精度を深めていくアプローチが取られます。これが半教師あり学習です。

半教師学習については、以下のコラムで詳しく解説しています。

「教師あり学習」「教師なし学習」とは。文系ビジネスパーソンのための機械学習

強化学習

「強化学習」は、正解となるラベルが付かない点では教師なし学習と同じです。違いは、コンピュータが返した出力内容を評価し報酬を与える点にあります。強化学習は、コンピュータが高い報酬を得るように動くことを求め、コンピュータ自身に処理方法を試行錯誤させていく技術です。

強化学習は、投資やゲームなど結果に優劣が付く分野での応用に用いられます。Googleの子会社であるDeepMindが開発し、当時の囲碁世界チャンピオンを打ち破り世界を驚かせた「AlphaGo」は、強化学習を用いて囲碁の勝ち方を学習したAIです。

強化学習については、以下のコラムで詳しく解説しています。

AIと機械学習、ディープラーニング(深層学習)の違いとは

機械学習の活用事例

機械学習を用いたAIサービスは、すでに私たちの生活のさまざまな場面で展開されています。ここでは、画像認識、音声認識、自然言語処理、分析予測、レコメンドの五つのジャンルに分けて事例をご紹介します。

①画像認識の活用

画像認識は機械学習が得意としている分野の一つであり、応用や組み合わせによりさまざまなサービスが登場しています。

データ化やダイジェスト作成

画像認識の身近な活用例として、手書き書類の自動データ化が挙げられます。手書きの書類をデータ化するには、従来であれば人が入力する必要がありましたが、機械学習により文字を識別する機能が進化し、入力作業を大幅に削減することが可能になっています。人的リソースを別の業務に生かせるだけでなく、入力内容が人が行うより正確になるメリットもあります。

画像データを用いたAIサービスとしては、動画のダイジェストやハイライトの生成などもあります。長時間の動画から見どころを抜き出して短時間の動画を生成するもので、撮影後すぐにダイジェストを配信したい報道機関や、手軽に動画編集を行いたいコンシューマー向けなどに展開されています。

また近年普及が進み続けているネット配信向けショート動画にも活用されています。ショート動画の制作者は「顔のアップは控えたい」「カメラの動きは遅めで」「各カットの長さは短めに」といったさまざまな要望を持っており、例えばNHKは、自動生成された要約動画を簡単な操作で修正できる機能も実現させています。

出典:NHK放送技術研究所「映像自動要約技術の最新動向」
   NHK放送技術研究所「画像解析AIによる番組映像自動要約システム」

顔認証

顔認証も、画像認識の活用例としてよく知られているでしょう。まだ実用段階にはないようですが、例えば公共交通機関の乗車システムに顔認証を活用する実証実験がされており、より便利な社会インフラの構築が目指されています。

また、動画に映っている人の顔から感情を推定する研究も行われています。詳しくは以下のコラムもご覧ください。
画像認識AIの世界。その仕組みと活用事例

異常検知・故障予知

画像認識の技術が実用レベルとして活用されているケースでは、製造業における異常検知・故障予知があります。これは工場内の要所にカメラを設置し、リアルタイムで画像分析を行い、異常や故障が起こりそうになったらアラートを出すといったものです。機械学習の力を借りることで人の負担を減らし、また検知や予知の精度も高くなることが期待できます。以下のコラムで詳しく解説しています。
AI×センサーで見通せ。「故障予知」から始まる未来
「品質管理AI」の違和感。その役目は人にある。

②音声認識の活用

大量のデータを収集しやすい音声の認識も機械学習が得意なジャンルであり、自然言語処理や自動応答といった他のAI技術と比べて、現時点で高いレベルに達しているといわれています。

音声AIの家庭での活用

音声AIとしては、Appleの「Siri」やGoogleの「Googleアシスタント」をはじめとした音声アシスタントがよく普及しています。音声アシスタントは、スマートフォンだけではなくスマートスピーカーからも利用可能で、生活の一部に取り込んでいる家庭も少なくないでしょう。以下のコラムで詳しく解説しています。
音声認識AIのいま。その技術や事例を知る

コールセンターでの活用

音声認識の技術が活用されている業種としては、コールセンターが挙げられます。顧客の問い合わせ音声からコンピュータが自動で何を要望しているか認識し、オペレーターがFAQや顧客データを検索するまでもなくディスプレイに表示させるサービスも登場しています。コンピュータが自動応答まで対応することで、コールセンターの営業時間外でも受付が可能になっています。

また逆に、コールセンターから顧客への営業などの電話にも、音声認識が活用されています。電話の録音・分析し、商談化に結び付きやすい話し方を知見として見いだし、人材教育に用いる例も出てきました。

出典:PRTIMES「Hmcommが、通販大手ディノス・セシールとコールセンター集中呼自動応答(音声Bot)」の共同開発を開始」
  :日経ビジネス「ベルシステム24野田社長「音声データがAIで宝の山に」」

※画像はイメージです。

自然言語処理の活用

AIは目的に合わせたパターンを学習することで、人間が話す言葉を処理する「自然言語処理」の精度を高めていくことも可能です。

文書分類の自動化

例えば、Laboro.AIではテキストを認識し、文書分類を自動で行う事例を手掛けました。ある大手通信企業では申込書の分類が担当者による手作業で行われていましたが、数が膨大なため、未振り分けのまま送られて不要な情報まで伝達されてしまう課題がありました。機械学習の1種であるニューラルネットワークによる文書分類アルゴリズムを構築することで、自然言語処理によるAIがテキストを分類、結果として業務改善につながっています。

参考:プロジェクト事例 文書分類による業務自動化率の向上

※画像はイメージです。

④分析・予測

分析や予測も、機械学習が得意とするジャンルの一つです。過去のデータを大量に学習することで、膨大なデータの分析や、将来どのような結果が起こり得るかの予測ができます。

売り上げ・需要予測

機械学習の分析・予測を生かしたジャンルとしては、売り上げや需要の予測があります。

店舗の来客分析への応用はその一つの例です。店内に分析用のカメラを設置して顧客属性ごとの商品の購買傾向、売り場の移動の仕方などを分析する技術は、機械学習により高精度に行う技術も登場しています。これにより、従来以上にターゲットを意識した仕入れや商品配置、導線を意識した売り場づくりなどの店頭施策の実施が可能になってきています。

小売り向けの自動発注システムを手掛けるシノプスは、スーパーの需要予測を卸業者や食品メーカーと共有するサービスを始めています。AIを活用した需要予測を基にスーパーから卸業者への発注を平準化したり、急な追加発注を減らしたりすることでトラックの無駄な配送を減らすことがねらいであり、トラック運転手の不足が懸念される「2024年問題」も見据えたサービスになっています。

出典:monoist 2020年2月26日「トライアルが首都圏初のスマートストア、リテールAIによる流通情報革命の現場に」
  :日経産業新聞「シノプス、スーパーの需要予測を卸と共有 配送効率化支援」

売上・需要予測についてさらに詳しく知りたい方は、以下の二つのコラムをぜひ参考にしてください。
需要予測AIよ、需要は予測するものでなく作るものだ。
POSからの脱却。小売AIの進化と可能性

乗車予測

タクシーの乗車予測にもAIが活用されています。例えば、ソニー系のタクシー配車アプリ大手「S.RIDE」は、ソニーグループの開発チームが携わった独自AIを採用。過去のタクシー利用客がいつ、どこから乗車し、どこで降りたかといった乗降データをAIで分析し、エリア内を走るタクシー空車台数などのデータと突き合わせて、時々刻々と変わるタクシーへの需要の高さを算出するなどしています。導入した会社の一つでは、AI需要予測サービスを使っているドライバーは、使っていないドライバーに比べ、5〜10%売り上げが高いという例も出ています。

出典:日経XTREND「ソニー系配車アプリS.RIDE好調 AI需要予測で売り上げ増」

※画像はイメージです。

⑤レコメンド

機械学習によって大量のデータを分析し、傾向や法則性を導き出すことで、利用者におすすめを提示する「レコメンド」系の製品・サービスが登場しています。

献立のレコメンド

献立のレコメンドサービスの一例として、自動献立提案AIアプリ「勝ち飯®AI」があります。これはトップアスリート向けの献立を分析し、一般アスリートや家庭での献立作りにも取り入れられるようにしたものです。詳しくは、以下のコラムをご覧ください。
新・食体験に挑む。食品AIの可能性

目的地のレコメンド

「クルマに乗ってどこかへ遊びに行きたいけど、行くべきところを具体的におすすめしてほしい」というニーズに対応し、機械学習によっておすすめの目的地をレコメンドするシステムをLaboro.AIが開発しました。AIとの対話を行うことで、ユーザーの潜在的なニーズを分析し、その内容から目的地を提案するAIレコメンデーションシステムです。

ユーザーのニーズを分析するとともに、観光スポットに関するデータを活用することで、レコメンドを行う対象を選定しています。詳しくは、以下のコラムをご覧ください。
自動運転だけじゃない。自動車×AIの最先端

機械学習がこれまでになかったサービスを創出していく

AI技術の一つである機械学習は、人間ではリソース的にも精度的にも不可能だったデータの出力を可能とし、さまざまなサービスの創出につながっています。多くの応用例が登場しているため、こうした情報をキャッチしながら、自社内でのAI活用の可能性を探ってみるのがおすすめです。

Laboro.AIでは、オーダーメイドによるAIソリューション、「カスタムAI」を開発・ご提供しています。こちらに過去の導入事例・活用事例をまとめていますので、ぜひご覧ください。

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