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Laboro.AIコラム

AIと機械学習、ディープラーニング(深層学習)の違いとは

2020.11.12公開 2024.1.31更新

概 要

AI、機械学習、ディープラーニングは同時に語られることが多いですが、これらはAIの一つの技術領域として機械学習があり、機械学習の一つの技術としてディープラーニングがあるというカテゴリ関係にあります。近年AIがブームになっているのは、機械学習の一手法としてディープラーニングが登場し、AIのレベルを大きく引き上げたことが大きな要因だとされています。

目 次

AIと機械学習、ディープラーニング(深層学習)の違いとは
 ・機械学習とは
 ・ディープラーニング(深層学習)とは
機械学習の種類
 ・サポートベクターマシン(SVM)
 ・決定木
 ・ランダムフォレスト
 ・ニューラルネットワーク
ディープラーニング(深層学習)の活用分野
 ・画像分野
 ・音声分野
 ・自然言語処理
 ・時系列データの予測
ディープラーニング(深層学習)を使った開発が向いているケース
 ・データセットの内容
 ・利用可能なハードウェア
 ・説明責任
AIと機械学習、ディープラーニング(深層学習)の違いを把握しよう

AIと機械学習、ディープラーニング(深層学習)違いとは

同時に語られることの多いAI、機械学習、ディープラーニングですが、これらはAIの1つの技術領域として機械学習があり、機械学習の1技術としてディープラーニングがあるというカテゴリ関係にあります。近年AIがブームになっているのは、機械学習の1手法としてディープラーニングが登場し、AIのレベルを大きく引き上げたことが大きな要因だとされています。

AIとは

「AI」には学術的にも定まった定義がなく、研究者によっても解釈が異なることがあります。しかし一般的には「人間の知能を模した機能を持つコンピュータシステム」だと理解されることが多いようです。ITを駆使したコンピュータなど、AIとは異なるシステムは、与えられた入力に対して決められた計算を行い、決まった出力を行う一方で、AIは計算の過程で分類や推論などの処理を行う点に特徴があります。その結果、これまでのコンピュータでは難しかった大規模なデータの処理や、人間では難しいパターンの検出などが行えるようになってきています。

「人工知能」と訳すことができるAIですが、人間のような知能があるわけではなく、特定の機能に特化したコンピュータシステムが大多数を占めています。現在は特定の目的で開発したAIを限定的なシーンで活用するケースが多く、多くの成果がある一方で、まだ進化の余地がある技術だと言えます。

機械学習とは

機械学習とは、膨大なデータをもとにコンピュータがルールやパターンを学習する技術を指します。データによりトレーニングを行うことで、特定のタスクを高い精度でこなせるようになります。機械学習はさらに、教師あり学習、教師なし学習、強化学習に分類できます。これらはタスクの内容に応じて適した技術が選択されます。

▼教師あり学習
コンピュータにリンゴの画像を学習させるというタスクがあった場合、さまざまなリンゴの画像に対し「リンゴ」という正解を一緒に与えるものです。コンピュータは多くの正解を分析しながら、リンゴについて学習していきます。

▼教師なし学習
正解を与えず、コンピュータは自分で特徴を分析しながら類似のデータをグループ分けするクラスタリングなどを行います。

▼強化学習
学習のプロセスもコンピュータ自身が強化していく技術で、最もいい報酬を得られるように学習内容を自動的に改善していくというものです。

これら学習方法の具体的な違いや活用方法については、以下のコラムで解説しています。

Laboro.AIコラム:「『教師あり学習』『教師なし学習』とは。文系ビジネスパーソンのための機械学習」

ディープラーニング(深層学習)とは

ディープラーニングとは、機械学習において必須とされるパラメータ「特徴量」を指定することなく、コンピュータ自身が特徴量を探して学習を行っていく手法です。

機械学習では原則として、人間が特徴量を選択する必要があります。特徴量とは、コンピュータが物事を認識する際に基準とする特徴のことを指し、リンゴの画像認識においては「色」「形」などが特徴量の一つとして考えられます。その画像に写っているものが赤色であればリンゴの特徴に該当しますが、紫色であればリンゴとは言えず、この色によってリンゴかどうかを判断するといった具合です。

コンピュータが機械学習でリンゴについて学習するためには、参考にすべき特徴量を人間が選択します。例えば、赤リンゴと青リンゴの分類を学習させたい場合、「形」の特徴量を参考にすると上手く分類することは難しいかもしれません。そこで「色」を参考にすると人間が特徴量を指定することで、コンピュータは赤リンゴと青リンゴの特徴を学習し、分類できるようになります。

この「特徴量の選択」という人間の作業を取り払ったのが、ディープラーニングです。ディープラーニングでは与えられたタスクに対し、どの特徴量を参考に学習すればいいのかもコンピューター自身が判断します。上記の赤リンゴと青リンゴの分類においては、色を参考にするのか形を参考にするのか、人間が指定せずとも「色が参考になる」と判断し、正確な分類を学習していきます。

ディープラーニングは人間の作業量が少なく、その上で従来の機械学習よりも高精度な判断を行えるようになる点がメリットです。また、色などの分かりやすく言語化しやすい領域よりも、言語化しにくいために人間では区別が難しい領域で大きな力を発揮すると言われています。

例えば、農家が経験によって振り分けるしかない農作物の等級の分類に関して、ディープラーニングを用いて分類を自動化する試みが行われています。等級や傷の有無など、品質の判断は赤リンゴと青リンゴの違いのような簡単なものではありませんが、ディープラーニングを活用すれば高精度な自動分類により業務効率化を進めることも期待されています。

特徴量の詳しい内容やディープラーニングとの関係については、以下のコラムもぜひ参考にしてください。

Laboro.AIコラム:「機械学習の鍵 「特徴量」。その重要性を考える」

機械学習の種類

機械学習技術には、計算の手順を示したさまざまなアルゴリズムが存在します。ここでは、代表的な手法として知られるサポートベクターマシン、決定木、ランダムフォレスト、ニューラルネットワークについて、簡単に説明します。

サポートベクターマシン(SVM)

サポートベクターマシンとは、主に教師あり学習の「回帰」や「分類」に使用されるアルゴリズムです。このうち分類は、そのデータがどのカテゴリに属するのかを振り分ける作業などを指します。

サポートベクターマシンでは、データを分類する際に境界線となるラインを決定します。例えば、ピーマンとパプリカを分類するタスクを考えてみます。ここでコンピュータに与えるデータが色の情報しかないと、境界線となるラインを間違えてしまい、未知のデータを与えた際に違った分類をしてしまうかもしれません。そこで、大きさの情報も与えることにします。すると、コンピュータは色と大きさの二つの情報からピーマンとパプリカの境界線を引くことができ、未知のデータをより正確に分類できるようになります。

決定木

決定木とは、主に教師あり学習で用いられるアルゴリズムです。分類の他、「回帰」でも使用されます。回帰とは、例えば降雨量や気温と作物の収穫量を学習することで、次の年の収穫量を予測するようなモデルを指します。

決定木は、樹形図と呼ばれる木を模した図をイメージすると理解しやすくなります。例えば、人の写った写真を男性か女性かで分類するタスクを考えてみます。最初の質問として、背が高いか低いかを設定すると、高い場合と低い場合で分岐します。次に、髪が長いか短いかの質問を設定すると、さらに分かれていきます。このように分岐を続けることで木の枝が広がるように学習を重ねていくことができ、未知のデータを与えたときに男性か女性かの正解を当てる精度が増していきます。

ランダムフォレスト

ランダムフォレストとは、主に教師あり学習の分類や回帰で使用されるアルゴリズムです。簡単に言えば、複数の条件で計算を行った決定木の結果を集め、多数決で最終的な結果を出力する手法となります。木が複数あるので森(フォレスト)というネーミングがされ、決定木よりも精度が高まる、過学習による精度の低下を回避できるといった特徴があると言われています。

ニューラルネットワーク

ニューラルネットワークは、昨今話題のディープラーニングでも用いられているアルゴリズムです。ニューラルネットワークは人間の脳を構成するニューロンの仕組みを数理的に再現したもので、ニューラルネットワークを用いたディープラーニングは処理の精度をその他の機械学習より飛躍的に向上できる可能性があるとされています。

ディープラーニング(深層学習)の活用分野

ディープラーニングが登場したことで、AI活用がさまざまな分野で発展しています。ここでは、代表的な活用分野についてご紹介します。

画像分野

上記でご紹介したリンゴの画像認識の例もそうですが、画像認識はディープラーニングが得意とする分野の1つです。身近なものでは、カメラの顔認識機能が挙げられます。コンピュータに顔の特徴を学習させることで画像から人間の顔を識別できるようにするもので、ディープラーニングによりさまざまな応用が登場しています。ベースとなる技術としては、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)が挙げられます。

また、消化器系がんの症例をディープラーニングで学習したAIによる、内視鏡AI診断支援技術も開発されています。胃や食道、大腸の内視鏡検査中に、AIがリアルタイムで画像を解析し、医師が診断時に見るモニターに映し出される内視鏡映像に、「がんの疑いがある部分を表示」することで医師の診断を支えるものです。

「第4回全国高等専門学校ディープラーニングコンテスト(高専DCON)2023」で最優秀賞を受賞した大島商船高等専門学校のチームは、AIを活用した魚の養殖の効率化を果たしました。タイは成長度合いによって個体の色が異なるため、AIによる画像認識技術により魚の色から大きさの違いを識別し、サイズの大小を84%の精度で判別できました。これにより、魚を均一に育てやすくなることで売り上げの増加や餌代の削減などが実現し、2年間で真ダイの養殖業者の収支が約400万円改善すると試算しています。

出典:富士フィルム「内視鏡AIとFUJIFILM
   日経産業新聞「高専がAIとドローンで魚養殖 DCON観戦記

画像分野におけるAI活用については、以下のコラムでもご紹介しています。

Laboro.AIコラム:「画像認識AIの世界。その仕組みと活用事例」

音声分野

コールセンターは、自然な対話や文章要約を得意とする生成AIの導入効果が特に高いと言われています。具体的な用途は、オペレーターが顧客対応中に必要な情報を表示するなどの他、通話内容の書き起こしに加え、「ボイスボット(AI音声による自動回答)」の実用化も進んでいます。

出典:日本経済新聞「コールセンターの顧客対応、生成AIで5割短く 13社調査

音声分野におけるAI活用については、以下のコラムでもご紹介しています。

Laboro.AIコラム:「音声認識AIのいま。その技術や事例を知る」

自然言語処理

手書き文字や発話など、様々な文字情報を処理する技術を自然言語処理と言います。この技術により、これまでは自動化が難しかった人間の作業もコンピュータが行えるようになってきています。 例えば、Laboro.AIの事例として文書分類の自動化があります。申込書に書いてある各テキストを、その後の工程の別々の担当者に振り分ける際、これまでは振り分け担当が目視で行うしかありませんでした。Laboro.AIが開発した文書分類ソリューションによるAIでは、書面上の文字情報を認識した上で、申し送るべき情報とそうでない情報を振り分けることを可能にしています。

(参考:プロジェクト事例 文書分類による業務自動化率の向上

時系列データ予測

膨大なビッグデータを処理してパターンを学習することで、コンピュータは未来の時系列の情報も高い精度で予測できるようになってきています。

実際に活用が進んでいる分野としては、小売店や飲食店の需要予測があります。これまでも売上や時間、天候などの情報から需要の予測を行えましたが、AIにより人為的なミスや経験の差を少なくし、より高い精度での需要予測が可能になっています。また、天気やポイント付与率などのデータを用いて需要予測を行い、自動で発注まで行うといった応用も登場しています。

セブン―イレブン・ジャパンは2023年3月にAIによる発注支援システムを導入しています。AIが各店舗に応じた発注案を作成することで、フランチャイズチェーン加盟店の発注作業にかかる時間を約4割減らせるとしています。AIがこれまでの売れ筋や気象状況、周辺のイベントの有無などから個店ごとの需要予測をして発注案を作成し、加盟店はこの提案を活用して発注数を決められます。

出典:日本経済新聞「イズミ、AI発注を全店で 天気や気温で需要予測
   日本経済新聞「セブンイレブン、AIが発注提案 店舗負担4割減

ディープラーニング(深層学習)を使った開発が向いているケース

AIを活用したシステムを構築したいとなった場合には、そのプロジェクトの特徴を検討することでディープラーニングが適しているかどうかを判断することになります。

データセットの内容

ディープラーニングでは人には判断ができないような複雑な分析も可能ですが、その分、膨大な学習データが必要となります。大量のデータが用意できるのであれば、ディープラーニングによるAIモデルの構築を視野に入れることができます。

利用可能なハードウェア

大量のデータを用いて複雑な処理を行うディープラーニングでは、その計算処理に耐え得るハードウェアを用意する必要があります。ディープラーニング用に設計されたハードウェアでは数秒で終わる処理も、スペックが足りないと数週間かかるといったことも起こり得るからです。

説明責任

ディープラーニングの特徴として、コンピュータが人に代わって特徴を抽出することのメリットをお伝えしました。その裏返しとして、アルゴリズムがなぜそのような出力をしたのかを説明できない「ブラックボックス問題」がディープラーニングには伴います。例えば医療でのAI活用のように人の命に関わるようなタスクの場合、「なぜAIがそのような診断・判断をしたのか」といった説明性は重要な点になります。こうした観点からもディープラーニングを用いるべきかどうかを判断する必要があるのです。

AIと機械学習、ディープラーニング(深層学習)の違いを把握しよう

似たような言葉として語られることも多い機械学習とディープラーニングですが、両者は学習過程で特徴量の選択を人間が行うかどうかという大きな違いがあり、必要なデータセットや得られる結果も大きく異なります。AIベンダーと協力してAIを導入する際にもこれら点は重要な論点となりますので、その違いをよく把握しておきましょう。

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